お茶がつなぐ人の縁

お茶がつなぐ人の縁

インタビュー
インタビュー 焙茶工房しゃおしゃん 店主 NPO 善隣館 理事長 前田 千香子さん
焙茶工房しゃおしゃん 店主 NPO 善隣館 理事長
前田 千香子 さん
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● お茶と人とのご縁に導かれて

 南部鉄瓶でお湯を沸かし、今年摘んだ気仙茶を入れる「焙茶工房しゃおしゃん」の前田千香子さん。静かに香りを吸い込むと、時間の経過と共に香りが丸みを帯びていきます。「お湯の温度によって香りも変化します」と、自ら選び焙煎した茶葉を用いゆったりとお茶を楽しむ前田さん。

 お茶屋さんになる前は県職員だったそうで、疲れたなと感じる度にお茶を入れ、心と体をリセットしていたといいます。そんな前田さんのお茶との出会いは、家で飲んだ台湾の烏龍茶でした。「飲んだ時に、こんなおいしいものがあるんだと感じました。その後、お茶にハマり、お茶で何かできないかと、知人を訪ねて台湾に旅行に行ったんです。お茶を買いたいと言ったら、山の方にある産地に連れて行ってくれて、そこで飲んだお茶がすごくおいしくてお茶ってすごいと感動しました」。その経験から、12年間勤めた県庁を退職し、お茶の勉強をすることに。台湾の語学学校に通い始めた前田さんに出会いの風が吹きます。「デパートの催事で知り合った農協のお茶関係の方にお店を教えてもらって、そのお店の常連だったお茶の先生と話すようになって、ご縁がリレーのように次々とつながっていくんです。九份(きゅうふん)(台湾北部の町)の喫茶店でアルバイトをした時は、これ飲んでみてとお茶をくれた台湾人の青年に、そのお茶を作った宋先生を紹介してもらって。その方が、後に私の師匠となりました」と話します。

「中国でも面白い出会いがあって、私の憧れの鳳凰単欉(ほうおんたんそう)というお茶の産地を探している時に、偶然入ったお茶屋さんに鳳凰単欉のポスターが貼ってあって。ここに行きたいと伝えたら、なんとお茶屋さんの実家だということで木を見せてもらい、ご家族と一緒にお茶作りもさせてもらいました」。と偶然の出会いが重なり、行きたい場所や会いたい人に国をまたいで巡り会わせてもらったと話します。

 こうしてお茶修行を続けるうちに、同じ茶葉でも買う場所で値段が変わり、同じようなものが都市部では産地の20倍もの値段で販売されることや、100g数百円のものから100万円もする高額なものまで幅があることを知り、何を基準にお茶を選べば良いのか分からなくなったという前田さん。修行の原点である台湾に戻り、宋先生の弟子として学びながらどんなお茶屋さんを目指すのか、自分の軸を立て直していきました。

● 次の世代へつないでいきたい

 約3年間のお茶留学から帰国し、2003年に「焙茶工房しゃおしゃん」をオープンした前田さん。単にお茶を販売するだけでなく、自分でお茶を摘み焙煎し、お茶の楽しみ方も提案するお茶屋さんを始めました。 「何事も初めから終わりまでやりたいという気持ちがあって。入れたお茶で笑顔になってくれるのが嬉しいんです」と前田さん。お茶屋さんになる前から続ける善隣館(盛岡市)の「お茶の会」は、生徒さんはもちろん前田さんにとってもお茶と自分だけに向き合うことのできる大切な場だといいます。

「お茶の会もそうですが、善隣館自体が皆さん一人一人何か心に灯火を持ち帰る場として運営してきました」と話す前田さんは、今年8月にNPO善隣館の理事長に就任。「他にもいくつか役員をさせていただいて、お茶屋以外の活動が増えてきました。大変ですが、これまで20年以上好きなことばかりやってきましたから、自分が何か役に立つことがあるならやらなくちゃならないし、そういうお話をいただけることは幸せなこと」と前田さん。たまたま役目が回ってきた「リリーフ」として今やるべき仕事をやり、常にいい形で次に引き継げるよう環境を作りながら頑張りたいと話します。

 日本、台湾、中国、香港でつないだご縁から生まれた「焙茶工房しゃおしゃん」のお茶も次の世代に残すことを考えているという前田さん。「志を持った時、周りの人が助けてくれて、出会いに導いてくれた経験は宝物になりました。意志は、自分がいなくなった後にも残るかもしれないと思います」。人をつなぎ、未来をつなぐ前田さんの挑戦はまだまだ続きます。

インタビュー 焙茶工房しゃおしゃん 店主 NPO 善隣館 理事長 前田 千香子さん

プロフィール

1966年、盛岡市生まれ。卓球中心の学生時代を過ごしインターハイ、インカレ、ミニ国体に出場。東京大学文学部では地域社会学を学び、岩手県庁入庁。退職後は台湾、中国、香港でお茶を学び、2003年に「焙茶工房しゃおしゃん」開業。現在はNPO善隣館理事長、中国語講師、通訳案内士(中国語)など幅広く活躍。2月に『The cup of…響き合うお茶と私とあなたの命』を出版

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