缶に入ったグミのような食感の肝油。戦後間もない頃の肝油は、主にビタミンD・Aを補給し、低栄養による骨折や夜盲症の予防を目的に販売されたものでした。そのビタミンD、実は骨を丈夫にするだけでなく、筋肉合成、花粉症予防、糖尿病などの生活習慣病などにも関係すると報告され注目を集めています。今回は改めてビタミンDを取り上げたいと思います。
ビタミンDとは
ビタミンDは、限られた食品にしか含まれず、穀類、野菜、海藻、果物には含まれていません。
ビタミンDにはキノコ類に含まれるビタミンD2とサケ、イワシ、サバ、カツオの魚類、卵などに含まれるビタミンD3があります。サケやイワシは、特にビタミンD3の含有量が多く、1切れでビタミンDの摂取目安量(8.5㎍⁄日)が優に取れます。魚を食べる機会が週1回程度と少ない場合は、ビタミンD不足が懸念されます。
日光浴でビタミンD3
ビタミンDが他のビタミンと違う点は、一日20分ほど日光に当たると紫外線のB波が皮膚に当たり表皮内で7-デヒドロコレステロールから体内でビタミンD3が生成されることです。ビタミンDの摂取目安量の8割ほど補給できるとされています。近年は、日焼け止めクリーム、UVケアの衣服が人気ですが、ビタミンDの補給には屋外で適度に日光に当たることが大切です。
ビタミンDの基準値
ビタミンDが足りているかどうかは、採血で分かります。25(OH)ビタミンD濃度が30.0ng/ml以上だと、ビタミンD充足状態(正常)、20.0ng/ml以上30.0ng/ml未満がビタミンD不足、20.0ng/ml未満ではビタミンD欠乏状態と判定されます。ある整形外科の報告によると、骨粗しょう症の患者さんの82%がビタミンD欠乏、ビタミンD不足が16%、正常だった人はわずか2%だったとのことです。
日本人の多くがビタミンD不足
日本人の成人9084人のビタミンDの充足状況を調査したところ、正常が1割以下(9.1%)、9割は不足状態で特に若い女性層が著しい低濃度であったと報告されています。この要因の1つに日焼け止めクリームの使い過ぎがあげられています。国際骨粗鬆症財団からは女性の90%以上が不足状態にある国として、日本と韓国があげられています。アメリカ(自発的に)、カナダ(法律で)などでは、牛乳にビタミンDが強化(例:2.5㎍/200cc)されているようです。
サルコペニア・フレイル予防のためにも
高齢者は外に出る機会が減ると日に当たる機会も少なくなります。サルコペニアやフレイル予防のためにも、筋肉の合成を促すビタミンDを食事でしっかり取る必要があります。手軽なサケ缶やイワシ缶、サバ缶、ビタミンDの強化された牛乳などの利用、また適量のサプリメントを取るのも良いと思います。
整形外科で5年ぶりに3回目の骨密度の検査を受けました。この機会にビタミンD濃度を知りたいと思い検査をお願いしたところ、骨粗しょう症の診断がないとできないとのことでした。自費なら検査できたのか…。