通信の力で岩手に活力を

通信の力で岩手に活力を

インタビュー
東日本電信電話株式会社 岩手支店長後藤 高宏 さん
東日本電信電話株式会社 岩手支店長
後藤 高宏 さん
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● NTTという大舞台の魅力

「起業するつもりで経済学部に進みましたが、自分でゼロから始めるよりNTTというステージを借りた方が大きい仕事ができると思った」と話すのは、NTT東日本岩手支店長の後藤高宏さん。まだスマホがなかった学生時代、大学でパソコン通信をした際に電力線ではなく電話線を使うことに着目し「今後インターネットができて世界中とつながる時、電話の回線が重要な位置付けになる」と情報通信業に無限の可能性を感じたといいます。

 入社から5年ほど経ったころ、何か面白いことがしたいと常々考えていた後藤さんに新商品の開発に携わるチャンスが訪れました。「NTTも変わらなければという危機感があって、若手を含めて社員が集められて商品開発をしました。なんとかして新しいことができないか毎日みんなで遅くまで喧喧諤諤やりました」。電気通信事業法やNTT法を踏まえつつ、知恵を絞り、新たなインターネット接続サービス「フレッツ光」などの開発・マーケティングに携わったといいます。「今皆さん普通に光回線を使っていますが、当時は既に電話線が行き渡っている状況で、全国津々浦々のお客さまの家までもう一本光ファイバーの線を引き直そうなんて誰も考えなかったと思います」と後藤さん。需要・効果など市場調査を行い、経営陣に何度も説明しながら一歩ずつ前進し、NTTというステージを借りたからこそ大きな野望を実現することができたと振り返ります。「通信をつなぎ続ける」というベーシックな部分と、社会を変える新サービスの提供や企業のDX推進、地域社会の課題解決などチャレンジングな部分を併せ持つことが、NTTという企業の面白さだと後藤さんは言います。

●復興庁での2年間と東北への特別な思い

 後藤さんが福島支店に赴任した翌年、東日本大震災が発災しました。「NTTは沿岸部2700kmの通信ケーブルが流されました。NTTのサービスはつながって当たり前なんです。どんな災害があろうと通信手段を提供するのが僕らの責務ですから」と、地震・津波・原発事故で大きなダメージを受けた福島で復旧・復興に奔走しました。  この福島での経験により後藤さんに思いがけない所から声がかかります。「さすがに自分では…と何度かお断りしましたが、被災地の道路や街並み、そこで暮らす人の思いが分かる人間だからと声をかけてもらったと考え、私の経験がお役に立つならとお引き受けしました」と、2013年から2年間、復興庁へ出向することになったのです。

 家族を福島に残し復興庁に行くと、後藤さんを含め少人数のインフラチームで住宅、上下水道、道路、河川、ダム、港湾、田畑まで多岐にわたる国家公務員業務を担当する日々。知らないこと、初めてのことばかりで「しんどい」の連続でしたが、被災地のために歯を食いしばって乗り越えたことが貴重な成功体験になったといいます。「インフラ復旧・復興支援の仕事で、岩手の沿岸部にも何度も行きました。関係府省庁等と調整して計画し予算化した復興道路・国道45号線が約2年前に久慈まで全通した時は本当に嬉しかった」と笑みがこぼれます。後藤さんから始まり2年で終了する予定だったNTTから復興庁への出向は、後任が派遣されたといいます。

 福島支店から復興庁を経て宮城支店、そして岩手支店と続き、東北には特別なご縁を感じるという後藤さん。通信をベースに地域の課題を解決し、地域に還元できることをしたいと話します。「例えば、岩手は森林も海も風もあって、再生エネルギーの資源が山ほどある。地域が資源を活用して電気を作って活用すれば、岩手の経済と雇用が潤います。地方が供給側に回るゲームチェンジを起こすチャンスがあるはず」。そのために地域に根差して事業を運営しているNTTが地域企業とさまざまな形で連携することも考えているとのこと。「なんとか岩手・東北に恩返しがしたいと思っている」と後藤さん。県内隅々まで足を運び地域に溶け込み、地域の人たちと一緒に地域の将来のためになるような面白いことをやり遂げたいと話します。

 まずは社内からと、打ち合わせや会議で一度は笑いをとることを日課に掲げ、なんでも話しやすい雰囲気を作っているとのこと。笑うことで心の緊張のハードルを下げ、ざっくばらんにアイデアを出し合い、岩手の地域資源でビジネスを創出したいと話します。

プロフィール

1975年生まれ、愛知県名古屋市出身。信州大学経済学部卒業後、日本電信電話株式会社(NTT)入社。東日本電信電話株式会社(NTT東日本)福島支店から復興庁に出向し、宮城支店部長を経て2023年6月から岩手支店長。趣味はスポーツ全般。テニスは学生時代から励み実業団でも活躍。夏はゴルフ、冬はスキーと岩手でもスポーツを満喫中。座右の銘はガンジーの言葉「明日死ぬと思っていきなさい。永遠に生きると思って学びなさい」

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