前回は肺炎の種類や特徴、予防策についてお伝えいたしました。どれくらい日常生活で実践できていますか。今回は肺炎の原因についてお伝えいたします。
肺炎をおこす病原体には多くの種類があります。主なものとして次のものがあげられます。
・細菌(肺炎球菌やインフルエンザ菌など)
・真菌(カビの仲間)
・ウイルス
・マイコプラズマ
・クラミジア
この中で最も多いのが肺炎球菌です。日本呼吸器学会の「成人肺炎診療ガイドライン2024」によると、肺炎の原因菌のうち肺炎球菌は33〜50%、インフルエンザ菌は7〜16%を占めています。
肺炎球菌による肺炎は時に重症化します。この菌は子どもの鼻や喉に住み着いていることが多く、大人でも一時的にうつります。
肺炎球菌が体にいても、必ずしも肺炎を発症するわけではありませんが、風邪やインフルエンザで体が弱っている時や誤嚥をしてしまった時に、肺炎や全身の感染症を起こしてしまいます。
また、中耳炎や副鼻腔炎を発症することがあり、さらに重くなると、脊髄にまで感染が広がった場合は脊髄炎を、菌が血液を介して全身へと広がった場合は敗血症を起こすなど命に関わる可能性もあります。
インフルエンザ菌は、肺炎の原因菌として2番目に多く、特に小児や高齢者に感染しやすいことで知られています。インフルエンザウイルスにかかって免疫力が低下しているときに、二次感染として肺炎を引き起こす原因菌になります。なお、インフルエンザ菌とインフルエンザウイルスは、名前は似ていますが全く別の病原体です。
その次に多いのが、マイコプラズマによる肺炎です。発熱と長く続く激しい咳が特徴で、初期には痰のない乾いた咳が出始め、徐々に痰を伴う咳へと変化します。咳はしつこく、3〜4週間ほど続くこともあります。
2023年のデータによると、肺炎による死亡者のうち97・8%が65歳以上であることから、特に65歳以上の方は肺炎の予防が非常に大切です。
前号(2025年12月号)では、予防策として手洗い・うがい、適度な運動、栄養バランスの良い食事、口腔ケアや生活習慣病の治療などを挙げましたが、ワクチン接種も有効な予防方法の一つです。肺炎球菌ワクチンは肺炎球菌による肺炎の発症や、重症化を防ぎます。
特に、免疫力が低下している方や高齢者に対して有用です。冷え込む日が続き、感染症が流行する時期でもありますので、ぜひ接種を検討しましょう。
岩手医科大学
内科学講座呼吸器内科分野
川田 一郎
■取材協力



