面白そうなことを思いついた。「地獄絵図」ならぬ、【地獄絵ZOO】プロジェクトである。
「地獄絵」というものをお寺さんでたまに見かける。そこに描かれた阿鼻叫喚、まさに地獄絵図の中に、えげつない刑罰を受ける亡者たちや、嬉々として亡者を虐め抜く鬼たちに混じって、恐ろしい形相をした動物たちの姿が見える。「地獄絵」がある寺院を訪ね、絵をつぶさに眺めながら、その地獄に棲まう動物たちの由縁などを調べ、とりまとめて行こうと考えているのである。
そもそも「地獄絵」とは檀家さんたち、特にも幼な子たちに、悪いことをすると死んだ後に地獄行きとなり、永遠のお仕置きを受け続けるのだと教える、いわば道徳教育のための道具である。あの、あまりに恐ろしい地獄の様子を見せることで、清く正しく生きることを諭そうというわけだ。
地下奥深くに続く地獄には、罪が軽い順に、浅い場所から「等活地獄」「黒縄地獄」「衆合地獄」「叫喚地獄」「大叫喚地獄」「灼熱地獄」「大焦熱地獄」「阿鼻地獄」と8段階があるとされる。
詳細に解説できるスペースがないのでざっくりと記すが、熱い糞尿の湖にいる《虫》に皮を破られ肉を食われる、鉄の甕(かめ)で熱さられる、炎の口をもつ《鳥》や《犬》や《狐》に食われる、鉄の棒で全身を貫かれる、熱鉄の斧で切り裂かれる、熱鉄の山を登らされる、大釜で煮られる、山の間に挟まれ押しつぶされる、鉄の臼と杵で砕かれる、鬼や熱鉄の《ライオン》や《狼》に食べられる、大鍋で何度も煮られて皮から骨の髄まで食べられる、熱鉄の針で舌を刺されて抜かれる、全身を熱鉄棒で叩かれ肉団子状にされて鉄鍋で何度も焼かれたり煮られたりする、炎の刀で全身の皮を剥ぎとられる、さらに沸騰した熱鉄を体に注がれる…と、超エグすぎる。
しかも、父母殺害など、もっとも罪の重い者が落ちる「阿鼻地獄」では、18人の鬼たちや《銅の犬》《8本角の牛》に囲まれて、降り注ぐ鉄の瓦で体を砕かれ、自分の体を自分で焼いて食べたり、《巨大な鳥》に捕らえられて石の山に落とされたり、《炎の歯を持った犬》に噛み殺されたり、そんな具合に、幾重もの刑罰が繰り返されるスペシャル版の重罰を受けることになるという。
以上、ざっと紹介した中にもチラホラ見えるように、《虫》《鳥》《犬》《狐》《ライオン》《狼》《銅の犬》《8本角の牛》《巨大な鳥》《炎の歯を持った犬》といった生き物・動物たちが、私たち愚かで罪深き人間たちの成れの果てを待ち受けているのだ。
そういえば私の妻の実家の菩提寺である宮古市の常安寺本堂にも、目測で高さ1.5メートル、幅4メートルという、おそらく県内最大級の「地獄絵」の額が飾られている。私はお盆やお彼岸で訪ねるたびにこれを見上げ、驚嘆と感動の時を過ごすのだが、これもよく見てみると《馬》《蛇》《顔が人の馬》《狼》がいるのであった。