奇妙な夢をよく見るので、たまに夢日記をつけたりしている。おかしな夢ばかりなので我が精神構造は大丈夫かと時々心配にもなるが、変な夢が多いわけにはなんとなく察しがついている。悪夢は尿意と連動していると私はにらんでいるのだ。「尿意=切羽詰まっている」なわけだから、そんな時に見る夢はたいてい切迫した展開が多くなるのは自然なことだ。還暦を過ぎ、夜間頻尿になってきたら、奇天烈夢の頻度が上がってきた。
こんな夢を見たこともある。
1点差で負けている9回裏、私は尿意を我慢したままバッターボックスに立っている。2アウトランナーなし。チームには悪いが早いところ凡退してトイレに行こう。そんな怠惰な気持ちで初球をいい加減にスイングしたらツーベースになってしまう。困ったもんだ。2塁上で尿意に耐えている。しかし次の打者は女子選手。きっとすぐにアウトになってくれるはず。そうタカを括る中、彼女は柵超えホームランを打つ。逆転サヨナラ勝ちだ。ま、いい。どうあれ、これでトイレに直行できる。私が向かった本塁ベース周辺にはチームメイトたちが勝利の立役者の女子を待ち構えて、大盛り上がり。私だけトイレに行けない雰囲気だ。仕方なく歓喜の輪に加わりつつ、さらに切羽詰まっていく…。さいわいなことに夢はそこで終わった。私は無事トイレに間に合った。ギリセーフである。
我が夢日記にはこんな記録もある。
「2021年3月19日 足元の草むらの間から濃い青の大きなインコがひょこひょこ歩いて出て来る」
夢占いで「青い鳥」は吉兆の象徴らしいが、なんで鳥なのに「歩いて出て来る」のだろうかと、ちょっと引っかかっていた。
そして、その夢のことなど忘れた同じ年の秋だった。私に本の出版話が舞い込む。古い縁やコロナ期といったタイミングが重なって飛び込んだ、まったく予期せぬ素晴らしいお誘い。私はそれに身を委ね、21年9月、無事に本が書店に並んだ。
バタバタが一段落した時、スケジュール表で出版までのメモ書きを見返した。そこには「3月29日、S氏から出版ばなし」と記されている。あれ、このあたりの時期になんか印象的なことがあった気がする。そう思って慌てて夢日記を開くと…。例の青いインコが歩いて出て来る夢の記録があるではないか。電撃的に出版話が飛び込む10日前に、私は青いインコの夢を見ていたのである。単なる偶然かもしれない。しかしまさに夢がある話、吉兆夢と思った方が幸せだ。
奇天烈と吉兆は紙一重かもしれない。私はこれからも奇妙な夢日記をつけていくつもりだ。



