前回は難聴による周囲への影響についてお伝えしました。今回は難聴の治療と予防についてお話しいたします。
現在の医療技術で治る難聴もあれば、治せない難聴もあります。実際に耳鼻咽喉科を受診していただいた際には、鼓膜所見を確認し、さまざまな種類の聴力検査や画像検査などを行い、難聴の原因や難聴の種類、難聴の程度を診断します。耳鼻咽喉科医は診断の結果、治療で改善する場合は治療を行い、治療で改善できない場合は補聴器などをおすすめします。
治療で改善する例としては、耳あかが詰まっても難聴になることもありますので、それを除去することで難聴が改善します。滲出性中耳炎(しんしゅつせいちゅうじえん)(弱い毒性の細菌や菌の毒素によって起こる中耳炎)、鼓膜穿孔(こまくせんこう)(慢性中耳炎/何らかの原因で鼓膜が破れ、塞がらずに残った穴のこと。情報の伝達が上手くいかず、音が聞こえにくい状態になります)などでは手術で改善することもあります。また、急性難聴は早くからの薬物治療などで改善することもありますので、早期発見が重要です。そして、長時間大きな音にさらされることで起こる騒音性難聴はその予防が大事になってきますので、きちんと耳の状態を診断することが必要です。
【難聴の進行や聞き取る能力の低下の予防】
① 耳にやさしい生活を心がける
騒音の中で仕事をしている方は耳栓をするなど耳を保護してください。また、大音量でテレビを見たり音楽を聴いたりしない、静かな場所で耳を休ませる時間を作るなど、耳にやさしい生活を心がけることが予防になります。
② 老化を遅らせるための生活習慣の見直し
生活習慣病を予防するための体調管理や栄養バランスがとれた食事、適度な運動、規則正しい睡眠、禁煙など「体にいいことは耳に良いこと」になりますので、難聴進行の予防になります。
③ 早期発見、早期治療のために定期的に耳鼻咽喉科を受診する
定期的に耳鼻咽喉科を受診し、聞こえの検査を行ってもらうことをお勧めします。聞き取る力を保つために補聴器で聞こえをサポートすることも聞き取る能力の低下予防になります。
耳に関して、気になる症状があるときは耳鼻咽喉科の専門医に早めにご相談ください。
岩手医科大学医学部
耳鼻咽喉科頭頸部外科
亀井昌代
■取材協力