良いワインは良いぶどうから
創業60周年を迎えたエーデルワイン。岩手初のワイナリーとして、岩手県産のぶどうのみを使用したこだわりのワインを作っています。大迫町でワインを作るきっかけとなったのは、昭和22・23年のカスリーン・アイオン台風でした。被害の視察に訪れた当時の県知事・國分謙吉氏が「大迫町はぶどう栽培の適地である。大迫を日本のボルドーに」と発したことが始まりです。
「石灰質を多く含む土壌、雨が少なく昼夜の温度差がある気候など大迫の特性を見抜き、ぶどう栽培を推奨した國分知事に感謝している」と話す株式会社エーデルワイン代表取締役社長の小田嶋善明さん。國分知事がいなければ、大迫にぶどうが実ることはなかっただろうといいます。
「60年前の大迫産ワイン第一号は『渋くて酸っぱくてウマグネ』と酷評だったそうです」と小田嶋さん。エーデルワインの歴史は、汚名返上から始まったようなものでした。「良いワインは良いぶどうから」の信念のもと、地元のぶどう生産者と二人三脚で技術を磨き、やがて世界のコンクールで金賞を受賞するなど、エーデルワインは世界が認めるワイナリーへと成長しました。
こだわりのワインを岩手から世界へ
小田嶋さんは、これまで40年以上酒類業界に従事してきました。当時勤めていた会社を退職した後は清酒メーカーへの再就職が決まっていましたが、5年前にエーデルワインから営業力を強化したいと声がかかりました。「想定外でしたが、問屋の立場でエーデルワインを見てきた中で『月のセレナーデ』を発売した頃から品質も知名度もグンと上がったという記憶があり、以前から岩手でトップのエーデルワインという企業に興味はありました」と小田嶋さん。岩手の老舗ワイナリーで、自分の経験がどこまで役に立つか挑戦したいという気持ちが湧いたといいます。問屋時代に培った営業ノウハウを活かし販路を拡大、ワインで地域の活性化にも貢献してきました。
「もちろんコロナの打撃はありますが、3年ぶりにワインフェスティバルやワイン祭りも開催でき、多くの方に楽しんでいただきました」と小田嶋さん。昨年オープンした「ワインシャトー平泉」も県外からの観光客で賑わっています。「今年は60周年記念ワインの発売のほか中国、台湾に続く海外との取引も強化します」と意気込は人一倍。一度飲めばおいしさは分かってもらえると、新たなファン獲得に向けて動いています。
春は自分で採った山菜をつまみに、夏は氷を入れてかち割りで、冬はホットでワインを楽しんでいるという小田嶋さん。特別な日には、日本では大迫でしか栽培していない希少品種「ラタイ」で乾杯することも。ぶどうの苗から始まるストーリーに思いを馳せ、コルクを開ける瞬間のワクワク感も楽しんで欲しいといいます。「岩手のワインってこんなにおいしいの」という嬉しい声を何度も耳にしてきた小田嶋さんは、まだエーデルワインを知らない人に岩手のぶどう100%で作った自慢のワインを届けていきたいと話します。
2022年9月9日に大船渡市長より感謝状をいただいた時の写真